LASIKやReLExの適応範囲内の方でも、ICL(眼内コンタクトレンズ)を使用することで、視力の質をさらに追求することができます。ICLは、通称「眼内コンタクトレンズ」や「眼内永久コンタクトレンズ」とも呼ばれることがあります。これは、角膜を削る手術を行わずに、眼内にレンズを挿入する方法で、高い視力回復が期待できる治療法です。

ICLの概要と歴史

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、眼の水晶体に対して屈折異常(近視、遠視、乱視)の矯正を目的として使用されるレンズです。このレンズは虹彩と水晶体の間に挿入され、固定されます

日本では2010年2月に厚生労働省の承認を受け、世界では1997年に欧州でCEマークを取得。その後、カナダ(2001年)、韓国(2002年)、アメリカ(2005年)、中国(2006年)を含む60カ国以上で承認されています。日本での認可から2018年3月までに累計775,000枚以上が使用されました。また、国内では96%(2015年JSCRS調べ)、世界全体では68%(2015年マーケットスコープ調べ)のシェアを占めています。

EVO+VisianICL STAAR SURGICAL

ICL 治療の方法について

有水晶体後房レンズ(ICL)は、強い近視や角膜屈折矯正手術では十分に視力を矯正できない方、また角膜が薄い方にも適応できる屈折異常眼(主に近視)に対する視力補正のためのレンズです。このレンズは虹彩と水晶体の間に固定されます。ICLは、必要に応じて再手術によってレンズを取り出したり、交換することも可能です。

ICLは、正式には眼内コンタクトレンズや眼内永久コンタクトレンズと呼ばれることもあります。適応検査の結果、ICLが適切な方法と判断された方に挿入手術を行います。

当院のICL
新しい機器・設備など

当院では、患者様一人ひとりの目の状態を丁寧に検査し、正確な情報の取得に努めています。また、精密で安全性の高い機器を活用し、患者様のQOL(生活の質)の向上をサポートするパートナーを目指しています。

例えば、ICL挿入術において、CASIA2等の前眼部OCTがあることでレンズサイズを高精度で設定することが可能となります。それにより、より精度の高いクオリティを追求することが可能となります。
また、乱視用のICLの場合、レンズの固定位置の合わせが重要となります。いわゆる乱視用でなければ、単純に白内障手術の設備のみでも可能ともいえます。
その乱視用ICLでは、位置合わせが重要ですので、IOLマスター700+カリストの様な手術支援システムが無ければ、目測でアバウトな位置合わせになります。当院ではより正確な位置合わせのため手術支援システムを導入運用しています。乱視用のICLを受ける場合は、そういった設備の整った施設を選択する事が重要です。

ICLの4つの特長

1.色鮮やかな見え方

角膜を削ることなく、眼内にレンズを挿入することで近視を矯正するため、収差の増加がありません。その結果、クリアで色鮮やかな視界を実感でき、従来とは異なるハイビジョンのような奥行きや立体感を感じることができます。

 

色鮮やかな見え方

2.幅広い矯正範囲

角膜を削ることができない「強度近視の方」や「角膜が薄い方」、さらに「角膜形状に不正がある方」でも、適応が可能です。
幅広い矯正範囲

3.長期安定性

ICLには、生体適合性に優れた新素材「コラマー(Collamer®)」を使用しています。1997年から欧州で販売が開始され、世界中で長期にわたり実績を積んでいます。

4.ノンドライアイ、紫外線ブロック

ICLは角膜を削らずに視力を矯正できるため、知覚神経を切断することなく施術が可能です。そのため、術後にドライアイを発症するリスクがありません。また、レンズには紫外線吸収剤が含まれており、紫外線A波およびB波をブロックします。ただし、ICLはUV吸収サングラスの代わりにはなりませんので、屋外での紫外線対策は引き続き重要です

ノンドライアイ、紫外線ブロック

術前検査と処置

手術前には、視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査、眼軸長検査、角膜形状測定など、手術に必要な目の検査を行います。また、血液検査も実施します。これらの検査結果を基に、患者様に最適な度数や大きさのICLを選定し、安全かつ効果的な手術を行います。

手術方法

手術は局所麻酔(通常は点眼麻酔のみ)を使用して行います。まず、角膜の外端(角膜輪部)に約3mmの小さな切開を加え、眼内を粘弾性物質で満たします。次に、筒状の器具にセットされたICLを眼内に挿入し、後房(虹彩と水晶体の間)にしっかりと固定します。手術後は、眼内を洗浄し、終了します。必要に応じて創口の縫合を行うことがあります。

  • 3mmの切開創からインジェクターにて挿入します。

    13mmの切開創からインジェクターにて挿入します。

  • 眼内でレンズがゆっくり広がります。

    2眼内でレンズがゆっくり広がります。

  • 指示部を虹彩の後ろに挿入します。

    3指示部を虹彩の後ろに挿入します。

  • ICLレンズを毛様溝に固定します。

    4ICLレンズを毛様溝に固定します。

術後の検査・処置について

手術後は、暫くの間、抗菌薬や抗炎症薬の点眼が必要です。さらに、症状に応じて眼圧を下げるための点滴が行われることもあります。術後の経過を確認するため、定期的に通院し、医師の診察を受けることが大切です。

予測される
効果
及びリスク・合併症について

予測される効果

ICLは近視の視力補正に効果的で、手術後には裸眼視力の向上が期待できます。ただし、回復の速さには個人差があり、視力の回復には時間がかかる場合もあります。

可能性のあるリスク・合併症と対策

白内障は、何らかの原因でレンズが水晶体に強く接触することにより発生する可能性があります。白内障が軽度の場合は経過観察を行いますが、視力に大きな影響を与える場合には、ICLを摘出し、白内障手術を行って水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入して視力を補正します。ただし、水晶体を摘出すると調節機能が失われるため、近視や遠視の補正に工夫が必要です。また、ICLのレンズ摘出・交換は、挿入したレンズのサイズや度数が適切でない場合などに行われることがあります。

米国における臨床評価(523眼)

白内障 2.90%(白内障手術に至ったものは0.4%)
レンズ交換・摘出 1.90%
レンズ位置直し 0.80%
眼圧上昇 0.80%
角膜混濁・浮腫 0.40%
網膜剥離 0.20%

手術・治療の費用